デュエルスター☆ユウキ


 DANZEN!13人はデュエルスター

 デュエルスター☆ デュエルスター☆
 デュエルスター☆ デュエルスター☆
 デュエルでキラキラ 13人はデュエルッスター!!

 マリガンしてまたマリガン ぶっちゃけあり得ない
 スリーブしててもカードは むちゃくちゃ曲がるしぃ

 お互いデュエルを 勝ち残るたび
 強く 少なく なるね〜
 アンタップ!アップキープ!引いてるんだから
 ディスカードなんて 目じゃない

 笑うカードに 福来るでしょ
 ライブラリーだって ブッ飛ぶぅ
 死体の花 咲かせて思いっきり もっとプロスブルーム!!

 デュエルスター☆ デュエルスター☆
 デュエルスター☆ デュエルスター☆
 デュエルでキラキラ 13人はデュエルッスター!!



 第9話 「電結男 〜100万人が泣いた究極のデュエル・ストーリー〜」


 新宿の都庁に近いところにあり、都庁よりも巨大で奇怪な外観の塔。
 それが、マジック・ザ・ギャザリングの発売元ウィザードブレインの日本支社である。
 螺旋状に渦巻く塔の先端には、人間の脳を模したドームがあり、そこが社長室にもなっているという。

 社長室には、社長の他に3つの人影があった。3人とも怪しげなフードをかぶっていて、その中身を隠していた。もったいぶりやがって。
「デュエルキラー四天王、参上しました」
「君たちを呼び出したのは他でもない、スターデッキの回収のためだ。君たちも知ってのとおり、既に四天王の一人ボブ・タップはデュエルスターに敗れた。奴 らの力がこれ以上大きくなる前に、スターデッキを取り返すのだ!」
「わかりました。我らデュエルキラー四天王の誇りにかけても、デュエルキラーを始末してご覧にいれましょう」



 ユウキが根城にしているカードショップ「コールドハウス」は、なにもカードゲームだけを販売しているわけではない。野球選手のトレーディングカードや食 玩のおまけ、会話型RPGやボードゲームなど、ホビー全般を取り扱っている。
 だから、店にはマジック以外の目的でくる客が来ることもある。っていうか最近はそっちがメインだったりする。もうマジック人気も下火だしね。

 いつものようにマジックを遊ぶために家さぶに来ていた新城ユウキは、クラスメイトの羽場アキラが店に入ってくるのを見かけた。
「アキラくん!こんなところで会うなんてめずらしいね」
「や、やあ…」
 羽場アキラ少年はメガネでヤセでチビで不潔で口ベタでしかもいつも情けない面をしているため、教室ではいつもいじめの対象になっていた。ユウキも常々同 情はしているものの、どう見ても本人に原因があるので仕方ないだろうと傍観している感じだ。
「もしかしてマジックやってるの?」
 ユウキはうれしそうに尋ねる。さすがは超のつくマジックバカだ。
「いや…その…オレは…」
 アキラはもじもじしつつもカード売り場の脇を通り抜け、美少女フィギュアの棚を眺めた。
「こ、これを買いにきたんだんだけど…」
「げえっ!?」
 ユウキが驚くのも無理はない。もう犯罪だろうというくらいエロくて病的なフィギュアだったのだ!
「すごいね…さすがアキバ系…」
「ま、まあね…これって3年前にやってた深夜カルトアニメ<電撃結婚ハツコイダー>のでんこタンなんだけど…」
 と、空気をまったく読まないオタトークが続くので省略。


「じゃあ、また学校でね」
「それじゃ」
 アキラは大きな箱を抱えて店を出て行こうとした。しかし、入口の前でちょうど入ってきた客と衝突してしまう。
「うわああっ」
「きゃあっ!」
 ぶつかった相手は結構な美人だった。
「ちょっと!痛いじゃないのよ!気をつけなさいよ!!」
 女はキレ気味だ。
「そ、そっちこそ…」
「ちょ、汚い手で触らないでよ!もう気持ち悪いわね!!」
「あ、僕のフィギュアが…」
「ちょっと、わたしを無視しないでよ!!」
 三次元の女性には目もくれず、フィギュアの無事を確かめるアキラ。それでこそ立派なアキバ系である。
「なにそれ?人形?うわぁ、気持ちわる〜い!!」
「だいじょうぶ、でんこタン?怪我はない?」
 おお、人間を無視して人形に話しかけてます。こりゃ真性だ。
「何よ、無視しちゃって!こんな人形がなんだって言うのよ!」
 女はアキラからフィギュアを取り上げると、床に思い切り叩きつけ、さらに踏み潰す。
「ああ…ぼくのでんこタン…」
 フィギュアは五体がバラバラになり、顔も判別がつかないほど潰れている。もはや何の萌えもない。
「あ、アンタみたいなキモいアキバ系男は自分の部屋に閉じこもって一生出てこなければいいのよ!死んじゃえ!バーカ!」
 壮絶な捨て台詞とともに、女は店を出て行った。いったい何しに来たのだろう。
 号泣するアキラの前にはバラバラのフィギュアだけが残されたのだった。



 家に帰ったアキラはまずPCを起動させ、おもむろにインターネット上の巨大掲示板「Aちゃんねる」にアクセスし、今日のことを書き込み始めた。

 731名前:名無しさん 投稿日:2005/12/19(月)23:45:10
 おまいらちょっと聞いてくれよ

 (中略)

 でした。泣きたいよ……(´・ω・`)

 732名前:名無しさん 投稿日:2005/12/19(月)23:49:12
 かわいそうに。
 ガンガレ

 733名前:名無しさん 投稿日:2005/12/19(月)23:51:20
 まあリアル女なんてクズばっかりだからな。


 Aちゃんねるとは、いつもは人々からキモイ・キタナイ・キミワルイと見下されているアキバ系の人間たちが憂さ晴らしをするために集まって雑談したり情報 交換したりする匿名の掲示板なのだ!まあ正確には違うんだけどフジのドラマではそういう扱いになってた。フジは死ね。
 アキラもまた、実社会ではいじめや差別や偏見に苦しめられているアキバ系男の一人として、この掲示板に愚痴を書き込んでいるのである。

 さて、次の日のことである。
 アキラのもとに、信じられないことが起こったのだった!


 750名前:731こと電結男 投稿日:2005/12/20(火)21:00:10
 昨日はどもです。
 電結のフィギュアを壊された男、略して電結男です。

 今さっき、宅急便で女性からお詫びの品と手紙が届きました。
 品はカードデッキでした。手紙の内容はお礼でした。
 「店の前でぶつかった者です」とあったので確定しますた。
 可愛らしい封筒&便箋&字ですよ!(;゚∀゚)=3ムッハー!!!
 なんかいい匂いもするような気がする(;´Д`)'`ァ'`ァ
 ダメだなんか顔熱くなってきた。もちつけ俺。

 751名前:名無しさん 投稿日:2005/12/20(火)21:15:00
 ちなみにカードデッキの中身はなによ
 どんなカードが入ってるかである程度わかるんじゃねーの

 752名前:731こと電結男 投稿日:2005/12/20(火)21:25:00
 Helmesとか書いてあるけど、どこのメーカーだろ。

 753名前:名無しさん 投稿日:2005/12/20(火)21:28:21
 へるむすキター

 754名前:名無しさん 投稿日:2005/12/20(火)21:31:15
 それHelmesデッキだよ!!
 彼女、すげー金持ちだなあ。

 755名前:名無しさん 投稿日:2005/12/20(火)21:31:59
 デッキのお礼にデュエルに誘え

 756名前:名無しさん 投稿日:2005/12/20(火)21:32:14
 今度のトーナメントに参加しる!

 757名前:731こと電結男 投稿日:2005/12/20(火)21:35:40
 ダメだ…
 オレ、マジックなんかやったことないし…
 女の人となんてゲームできん…_| ̄|○

 758名前:名無しさん 投稿日:2005/12/20(火)21:37:21
 勇気を出せ

 759名前:名無しさん 投稿日:2005/12/20(火)21:37:30
 ダメもとでやってみるべき

 760名前:731こと電結男 投稿日:2005/12/20(火)21:40:10
 わかりました。今からちょっと電話してみますノシ

 761名前:名無しさん 投稿日:2005/12/20(火)21:41:01
 成功をいのる

 762名前:名無しさん 投稿日:2005/12/20(火)21:58:10
 731はうまくやってるだろうか

 763名前:731こと電結男 投稿日:2005/12/20(火)22:05:03
 デュエルどこかたのむ

 764名前:名無しさん 投稿日:2005/12/20(火)22:05:41
 キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

 765名前:731こと電結男 投稿日:2005/12/20(火)22:11:07
 来週のトーナメントに一緒に出場することになりました。
 でもマジックなんてやったことないし。どうしよ……(´・ω・`)

 766名前:名無しさん 投稿日:2005/12/20(火)22:15:13
 よーし、みんなで731にマジックをレクチャーしてやろうじゃないか

 767名前:名無しさん 投稿日:2005/12/20(火)22:20:10
 ルールはちょっと面倒だけど、基本は簡単だって


 この後、スレ住人相手による電結男へのデュエルの講義が続く。


 793名前:名無しさん 投稿日:2005/12/20(水)22:45:10
 初心者は無難に、アーティファクト系で行ったらいいんじゃないかな。

 794名前:名無しさん 投稿日:2005/12/20(水)23:51:10
 決めカードはもちろん「電結の破壊者」だな
 あと、接合持ちのクリーチャーを15体くらい。

 795名前:名無しさん 投稿日:2005/12/20(水)24:05:45
 デュエル当日に持っていくもの
 筆記用具
 デッキレシピ(参加前にカードリスト記入するため)
 ライフカウンター(なんでもいいからライフの増減を記録しておくもの)
 トークン

 住人によるレクチャーは数日間続く。
 そして、ついにトーナメントの当日へ。

 950名前:電結男 投稿日:2005/12/24(土)23:03:21
 いよいよ出かけます。
 オレがここまで来れたのも皆さんのおかげです。
 色んな方々の助言、声援を得て俺は少し成長できました
 なんか短い間だったけど、長かったような感じがします
 ではまた

 こうして電結男こと羽場アキラは、付け焼き刃の知識でマジックを教わり、エルメスの待つトーナメント会場へと向かったのである。
 不安に怯える彼は知らなかった。ネット上でのやり取りの間に、彼は常人のマジックプレイヤーをはるかに上回る技量を手に入れていたということに。

 983名前:電結男 投稿日:2005/12/25(日)11:45:10
 携帯からカキコ
 会場の入り口のところでなんとエルメスさんと会いました。

 「どうも…」
 「よかった、来てくれないかと思って心配したんですよぅ」
 この間のツンケンぶりがウソのようなやさしい態度に驚きですよ。
 しかもよく見るとすごい美人じゃないですか

 984名前:名無しさん 投稿日:2005/12/25(日)11:46:09
 エルメスたんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

 985名前:名無しさん 投稿日:2005/12/25(日)11:47:10
 ツンデレキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

 986名前:電結男 投稿日:2005/12/25(日)11:54:17
 その後受付をすませて対戦の組み合わせを見たんですよ。
 でも、漏れとエルメスさんはトーナメント表の
 それぞれ端っこという抽選の悪さ。
 どうしよう…

 987名前:名無しさん 投稿日:2005/12/25(日)11:57:30
 どうしようって言ったって、決勝戦まで勝ち残るしかないじゃないか。
 エルメスたんとデュエルするんだろ?

 988名前:名無しさん 投稿日:2005/12/25(日)11:59:45
 電結男、お前ならきっとできる。漏れたちとの特訓を思い出せ。

 999名前:電結男 投稿日:2005/12/25(日)12:01:28
 みんな…
 わかった。頑張ってみる。おまいらも応援しててくれ。

 1000名前:名無しさん 投稿日:2005/12/25(日)12:04:33
 ガンガレ
 おまいには漏れたちがついている。


 それから、試合は順調に進んでいって、準決勝まで来た。

 ネット上でそんな熱いやりとりが繰り広げられていることなどまったく知らない新城ユウキは、対戦相手の席にクラスメイトが座っていることに驚いていた。
「アキラくんってマジックには興味がなかったんじゃ…」
「うん、つい最近始めたばかりなんだ…」
「すごいね。大会だってはじめての初心者なのに、準決勝まで来るなんて!」

 そう、もう準決勝である。
 なんだかんだ言って、アキラは強かったのである。

「隣はもう勝負がついたみたい。女の人が勝ったみたいだね」
(オレが勝てば、エルメスさんとデュエルができる…)
 アキラの目は、決勝戦で戦うことになる女性=エルメスに向けられていた。
(あと一人だ。みんな、エルメスさん、オレに力を!)
 アキラの持つエルメスのデッキが光り輝く。

(ユウキさま、気をつけてください。この人もデュエルスターですっ!!)
「何だって!このパワー、今までのデュエルスターとは比べ物にならない!」

「ウフフ…見事に私のシナリオ通りね。デュエルスター・ユウキ、あなたの最期よ」
 対決の様子をうかがうエルメスは、本性とも言うべき邪悪な笑みを浮かべた。
「デュエルスター・アキバは、デュエルスターとしての本来の力に加え、アキバパワーという強大なエネルギーを持っている。この二つの力が合わされば、他の デュエルスターなど物の数ではない。せいぜい、デュエルスター同士で争うがいい」


「こうなったらもう戦うしかない!セーラ、やるぞ!」
「はいっ」
 ユウキのスターデッキも白い輝きを放つ。
「デュエルスター・ユウキ、決闘開始!!」

 デュエル序盤、ユウキは白騎士やペガサスなど、軽量クリーチャーによる短期決戦を試みるが、アキラの守りは的確で、なかなかダメージを与えることができ ない。
 マジックをはじめて間もないアキラが、いくらデュエルスターとはいえこれだけの技量を持っているのには理由があった。


 1075名前:電結男 投稿日:2005/12/25(日)14:46:37
 相手が白騎士とペガサスでアタックしてきたんだけど、どうすればいい?
 手札にはショックと火の玉あるんだけど

 1076名前:名無しさん 投稿日:2005/12/25(日)14:46:59
 白騎士はさっさと焼いたほうが吉

 1077名前:名無しさん 投稿日:2005/12/25(日)14:47:04
 いや、このターンは耐えて、マナが溜まってから一掃したらいいんじゃね?


 デュエルスター・アキバの能力、それはスターデッキを介してインターネットに常時接続できることなのだ。
 それはつまり、インターネットの持つ膨大な情報量に自在にアクセスし、必要な情報やアドバイスを瞬時に得ることができるということ。そしてまた、


 1078名前:名無しさん 投稿日:2005/12/25(日)14:47:45
 電結男ガンガレ

 1079名前:名無しさん 投稿日:2005/12/25(日)11:47:49
 相手のデュエリストは一人だが、おまいにはAちゃんねるがついている


 インターネットを通して寄せられる電結男への応援メッセージが、電結男へ愛と勇気と友情のエネルギーを与えているのである。今や、世界各地のニートや引 きこもりといったネット住人たちがこの勝負を見守っているのであり、そしてその全員が電結男の勝利を願っているのだ!
 これが、アキバパワーの強さである。

 圧倒的なアキバパワーの援護を受けて、アキラはユウキをどんどん追い込んでいく。気がつけば、ユウキの場にはクリーチャーが<セラの天使>1体のみに なっていた。
(まずいですわ、ユウキさま)
 アキラの側はというと、ゴーレムや機械をはじめとするアーティファクト・クリーチャーの大群である。
「いや、まだ勝機はある!<粉砕の嵐>だ!!すべてのアーティファクトを破壊する!」
 ユウキの切り札が炸裂した。アキラの場にいたクリーチャーは全てアーティファクト・クリーチャーなので、全滅である。ただ1体、<カルデラの盾>を装備 していた<電結の破壊者>だけが破壊をまぬがれた形となった。
「これでクリーチャーの数は1対1!まだ勝負はわからないぞ!」
「それはどうかな?」
「何っ!」
(大変です!ユウキさま、見てください!!)

「オレが場に出していたアーティファクト・クリーチャーはすべて、<接合>という特殊能力を持っている。すなわち、場から墓地におかれた場合、自身の持つ +1/+1カウンターを別のクリーチャーへと移すことができるのだ」
「ということは、ボクが今の<粉砕の嵐>で倒したアーティファクト・クリーチャーのパワーの分だけ、<電結の破壊者>が強くなるのか?!」
「その通りだ!これでオレの<電結の破壊者>はパワー/タフネス=13/13のトランプル持ちとなった」
 普通、これだけ強いクリーチャーが場に出れば勝負は決まったようなものである。


「まだだ、これからオレの本当の力を見せてやる」
 アキラはばっ、と両手を天にかざした。降参か?と思ったが違うらしい。

 1175名前:電結男 投稿日:2005/12/25(日)15:20:13
 ネット上のみんな!オラに+1/+1カウンターを分けてくれ!!

 1176名前:名無しさん 投稿日:2005/12/25(日)15:20:49
 手を上げればいいんだな。ちょっと疲れたけどおまいのためなら平気だぜ

 1177名前:名無しさん 投稿日:2005/12/25(日)15:21:34
 おい、みんなで電結男を応援しようじゃないか!

 1178名前:名無しさん 投稿日:2005/12/25(日)15:21:56
 おまいは漏れたち毒男の希望だ!

 1179名前:名無しさん 投稿日:2005/12/25(日)15:22:04
 サーターン!サーターン!


 いま、世界中のニートや引きこもりやアキバ系や毒男や喪男たちが、電結男へ向けてエネルギーを送っていた。実社会では何の力もない彼らだからこそ、内に 秘めたパワーは非常に大きい、それらがいま、一人の人間の下に集まったのだ。

「みんなのパワーがキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!」
<電結の破壊者>に乗ったカウンターの数は、優に100万を超えていた。ジャッジがその数を計測しようと近寄ろうとして、
「どれどれ…スカウターが、ぎゃあっ!」
 審判の身に着けていたスカウターはあっさり吹っ飛んだ。計測不能である。単純に100万パワーくらいはあるであろうと思われる。まあ、まず通常のデュエ ルではお目にかかれないような強さのクリーチャーである。

「とどめだっ!」
「くそっ、さすがにこれだけのパワーには、どうあがいても太刀打ちできない!」

「させません、ユウキさまは、わたくしが守ります」
 セーラが実体化し、<電結の破壊者>の前に立ちふさがった。ブロックするつもりらしい。
「ダメだ、相手はトランプルを持っているんだ。ブロックしても意味がない!」
「いいえ。例え1点であってもユウキさまへのダメージを減らしたいんです。それが天使であるわたしの使命なんです!」
「セーラ…そこまでして、ぼくのことを…でもダメだ。キミは僕の大切なパートナーなんだ。例えカードであっても、ぼくのためにキミを傷つけるなんてできな いよ」
「ユウキさま…」

 そんな二人の小芝居を、だまって見ていたアキラの目は真剣そのものだった。
 彼の脳裏に、二次元好きの自分の本性がよみがえったのである。


 2178名前:電結男 投稿日:2005/12/25(日)15:35:32
 ダメだ…
 漏れにはどうしても、目の前にいる<セラの天使>を攻撃することができない。
 やっぱり漏れは、リアルな女よりも二次元が好きみたいだ…

 2179名前:名無しさん 投稿日:2005/12/25(日)15:36:29
 どうしちまったんだよ!
 あと一息でエルメスとのデュエルじゃないか!!

 2180名前:名無しさん 投稿日:2005/12/25(日)15:36:46
 ここまで来てあきらめるのかよ!
 今まで応援してきたオレたちを裏切るのか…


 急激にヒートダウンしていく住人たち…
 だが、少しずつ電結男を擁護する書き込みもあらわれた。


 2213名前:名無しさん 投稿日:2005/12/25(日)15:37:53
 いや、その気持ちよくわかるよ。
 漏れも、オタ趣味を捨てられなくて彼女と別れたし。

 2214名前:名無しさん 投稿日:2005/12/25(日)15:39:02
 まあ、本人の問題だからな。

 2215名前:電結男 投稿日:2005/12/25(日)15:43:28
 ここまで応援してくれたみんなには、済まないと思ってます
 でもこれが悩みぬいて出した結論です。
 もうここにこの名前で書き込むことはないと思います
 最後に、おまいら、ありがとう

 2220名前:名無しさん 投稿日:2005/12/25(日)15:47:54
 がんばれよ、電結男
 お前の戦いはまだ始まったばかりだ!

 2220名前:名無しさん 投稿日:2005/12/25(日)15:50:19
 このスレッドは終了しました。


「この勝負、オレの負けだ」
「ええっ、うそ?いいの?」
 突然の降参に、事情をまったく知らないユウキはめっちゃ困惑した。

「ちょっと、ちょっと!わたしとのデュエルの約束はどーする気なのよ!」
 テーブルの前にずかずかとやってきたのは、渦中の人物エルメスたん(仮称)であった。

「いや、どうもこうも、負けちゃいました。残念ですがデュエルは…」
「アンタとのデュエルなんてどうでもいいのよ!ムキー!!デュエルスターを操って同士討ちさせるわたしの作戦が失敗しちゃったじゃないのよ!どうしてくれ るのよ!」
「えっ…?」
「あのー、なんか話がまったく見えないんですけども」

「あー、もうしょうがないわねー」
 エルメス(仮称)さんは、綺麗なロングヘアーをボリボリ掻きながら一歩下がって派手に見栄を切る。


「あたしはデュエルキラー四天王の一人、デュエルメス!!」


「な、なんだってー!」
 衝撃の事実に唖然とする二人のデュエルスター。
「わたしは、今巷で大ブームのアキバ系に目をつけ、この力を利用してデュエルスターどもを倒す計画を立てた。そして、その辺にいた適当なアキバ系男をそそ のかしてデュエルスターになるよう仕向けたのよ。アキバパワーとスターデッキの力があれば、最強最大のデュエルスターになれる。絶対にうまく行くと思って たのに…!」
「じゃあ、初めからオレを騙して…」
「当たり前じゃないの!誰が好き好んでアンタみたいなキモ男なんて!!」

(グサッ)「そ、そんな…」
 ガーンという効果音が聞こえてきそうなくらい落ち込んだアキラの横で、スターデッキが灰になり崩れ去った。持ち主が心の底から敗北を感じたとき、デュエ ルスターはその資格を失うのである。

「こうなったら仕方がないわ。お前がさっきネット上から集めたアキバパワーをわたしが吸収し、スーパーデュエルキラーになるしかないようね!!」
 デュエルメスはアキラに飛びかかり、頭を押さえつける。
「ちょっとキモイけど仕方ないわね、かぷっ!ちゅー、ちゅー」

 まあぶっちゃけキスですよ。バキュームキス。アキラから生気(アキバパワー?)を吸収してるっぽい。
「ぷはぁっ!!気持ち悪くて吐きそうだったけど、どうにか全部吸い取れたわ」
 デュエルメスは、新たに得た力を確かめるように軽く全身を動かす。

「すさまじい力が湧いてくるわ!カラダが熱い!この力があれば、わたしは世界を支配できる!!ひざまずけ、全世界の者どもよ!今からわたしがお前たちのあ るじだ、これから貴様らは、わたしをご主人様と呼び敬い従うがいい!!」



 そして数日後。
「いらっしゃいませー、ご主人様ぁー」
 秋葉原のメイド喫茶で働くデュエルメスの姿があった。

「おそらくアキバパワーを吸収したせいで、アキバ系に目覚めちゃったんだろうね」
 ユウキはアキラに連れられてメイド喫茶に来ていたが、店内はピンク一色にアニソン垂れ流し、客はキモい連中ばかりとなんとも落ち着かない雰囲気の店で あった。
「あの感じだと、もうデュエルキラーとして悪さをすることはなさそうだ」
 それだけを確かめるために来てみたが、もうこんな店は御免だとユウキは思った。
「昨日、クラスの女子に告白されちゃってさあ」
「え、ホントに?いったい誰なのさ」
「秘密だよ、でも結構かわいい子だよ」
「え〜、いいなあ」
 アキバパワーを吸収された羽場アキラは、その後、急に垢抜けて性格も明るくなり背も伸びてニキビも消えフローラルの香りがするようになり、今ではすっか りイケメン君となっていた。他校にもファンクラブができたとかいう話だ。
 しかし、相変わらず中身はアキバ系のようで、こうしてメイド喫茶にも足しげく通っているようだった。
 今回の事件で一番得をしたのは、電結男こと羽場アキラだったのかもしれない。

 こうして、デュエルスター・ユウキとデュエルスター・アキバとの対決、そしてデュエルキラー四天王の一人・デュエルメスとの死闘は幕を閉じた。
 だが、デュエルスターの戦いはまだ終わったわけではない。残りの四天王もまた、デュエルスターを狙っているのだ。戦え、デュエルスター・ユウキ!!


 次回予告
 マジック発売10周年を記念して、愛・マジック博が開催された。
 そこから帰ってきた人たちの様子がおかしい。
 まるで昔に戻ったように、押入れの中に入った古いカードで遊び始めた。
 これじゃあ、新しいマジックのカードが全然売れないよ!?

 マジックの未来を救うため、デュエルスター・ユウキが立ち上がる。


 次回 デュエルスター☆ユウキ「嵐を呼ぶモーレツ!クラシック帝国の逆襲」 





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