デュエルスター☆ユウキ


 SPECIAL DUELIST DUELSTAR

 SDD、スペシャル・デュエリスト・デュエルスター
 萌えるカードでクールに戦う13人のデュエリストたち
 彼らの使命は、スターデッキを手にする自分以外の12人のデュエルスターを倒し
 全デュエリストの頂点に立つことである!

 5色のマナよ 手札たちに届け
 輝くスペルを かなえられるように
 叫ぶジャッジコール いざ決闘だ
 インクのにおいを のがしはしない
 ワン!アンタップアップキープ
 ツー!デュエルスター
 スリー!ドローフェイズ
 フォー!メインフェイズ
 ファイブ!ディスカード!

 ライブラリーの底まで追いかけていく
 暗黒の儀式でブースト踏み込む
 60枚のカード合わせ 向かうところ敵なし
 デュエルの星を手に入れるために
 さあアンタップ アップキープだ
 ファイナルコンボ 決めるぜ
 デュエルやりたい デュエルスター


 前回までのあらすじ
 デュエルスター・シャークこと鮫島ジャークに敗れた黒宮サキは、失意の中で謎の男・神崎ドロウと再会し、謎のカードを手渡される。そのカードを手にした とき、黒宮サキの身に異変が起こった!!


 第7話 立て!デュエ リストの少女、廃人デュエルスターを救え


 ここは治安の悪い新宿歌舞伎町あたりにあるデュエルスペース。
 デュエルスター・シャークこと鮫島ジャークのホームグラウンドである。
「今日も大漁だったぜ〜」
 テーブルの上に、さまざまなレアカードを並べていく。すべて、シャークトレードで手に入れたものだった。
「あとは、これをヤフオクで売るか…」

「見つけたわ」

 背後の声に鮫島が振り向くと、妖気をまとった女がいた。

「誰だ!」
「忘れたとは言わせないわ、黒宮サキよ」
 女はそう言うが、そこにかつての黒宮サキの面影はほとんど残っていない。顔は青白く、目は赤く輝き、口からは牙が伸びている。もはや吸血鬼だ。

「な、なんだと思ったら昨日の負け犬か。今度こそ、オレにとどめをさしてもらいたいようだな」
「ごたくはいいわ、さっさと始めるわよ」
「そうかい。今度はもっともっと恥ずかしい目に遭わせてやるよ」

「デュエルスター・ナイト!私を夜の闇に包め!!」
「デュエルスター・シャーク!怒涛の鮫!!」

 デュエルスター同士の戦いが始まった。

「最も強い者だけが生き残る。それがデュエルスターの定め」
 サキが場に出した緑のカードには、彼女の言葉とほぼ同等の意味が書かれている。

 <適者生存/Survival of the Fittest>である。
 このカードこそ、神崎ドロウより渡された悪魔のカードの一つだった。

「弱い者には、用はない」
 サキは手札から<黒騎士>のカードを捨てる。
「バカか!そのカードはお前の契約クリーチャーじゃねえのか?昨日の戦いのショックで頭がイカレちまったのかよ」

「これも要らない、これも、これも、わたしが欲しいのはこれじゃない…」
 鮫島の言葉にもサキはまったく無反応で、手札のクリーチャーを捨てるばかり。

「まあいい、こっちはハールーン・ラガー(ミノタウロス)を召喚するぜ。お嬢ちゃん、今度は脱ぐ覚悟ができたかい?ケッケッケッ!」
 鮫島は得意のデニム渡りを出してきた。サキの服装は昨日と変わらずジーンズ履きだったので、彼には好都合だった。
「今このデュエルスペースには客は来てないが、ちょうど防犯カメラがこのテーブルを映してる。お前がそのズボンを脱いだら、インターネットで恥ずかしい姿 を世界中に流してやるぜ!うひゃうひゃうひゃ!」
 まったく卑劣な男である。

「ネクラタルを場に出すわ、場に出たときの能力でミノタウロスを破壊する」
 だが、サキはうろたえることなく対処した。<ネクラタル>は場に出たときにクリーチャー1体を破壊するという効果がある。サキにはめずらしく、気の利い たカードの使い方だ。

「チッ!そんな貧弱なクリーチャー1匹で、何ができるっていうんだよ!ほれ、<ショック>で2点のダメージ!!」
 ネクラタルはあっさり墓地へ落ちていく。
「今度はオレ様の番だぜ、昨日シャークトレードで手に入れた超大物、<シヴ山のドラゴン>だぜ!!」
 これはまた強力なクリーチャーを出してきたもんである。

「例え、何度殺されようとも、何度でもよみがえる。何度も、何度も…」
 ミサはぶつぶつ言いながら、もう一つの悪魔のカードを場に出した。

 そのカードこそ、<繰り返す悪夢/Recurring Nightmare>

「ネクラタルよ、よみがえれ…」
 墓地から再びネクラタルが場に戻る。またもネクラタルのカードの効果で、鮫島の<シヴ山のドラゴン>は破壊された。

「き、貴様…」
「もう、お前に勝ち目はない。ナイトメアコンボが発動してしまった以上、お前は決して、この<悪夢>から逃れることはできない…」

 黒宮サキの影から、黒いクリーチャーが姿を現す。昨日までのそれは、馬に乗った騎士という姿をしていたが、今は真っ黒い馬が一匹いるだけだった。

「おいで、わたしの、新しいしもべ…」

 馬に似た姿のこの怪物は、ひとに悪夢を見せるという夢魔。ナイトメアだ!!

「わたしは、もはやデュエルスター・ナイトじゃない。弱い自分を捨てて、生まれ変わった闇の姿」
 今やこの小さなデュエルスペースは、サキとナイトメアの発した闇に覆い尽くされていた。
「な、なんだ…こいつは…」
 鮫島の目は恐怖に見開かれ、ありえないくらいガタガタと震えている。

「わたしは、デュエルモンスター・ナイトメア!! お前に永遠に終わらない悪夢を見せてやろう!!」
「ぎゃあああああああああああああああ!」
 まさに、断末魔の叫び。

 デュエルスター・シャークこと、鮫島ジャーク。再起不能(リタイヤ)。



「倉田さん、もう何ヶ月も来てないような気がするけど、元気だった?」
「ユウキさんって時々変なこと言うのね。別に変わりないわ」
 一方、我らが主人公である新城ユウキは、倉田リリスの家に訪れていた。もう勝手知ったるもので、普通にリリスの私室にあがりこんでる。

「倉田さん。今日は、学校で流行ってるゲームを持ってきたんだ」
「え、まさか…?」
 リリスの顔に不安がよぎる。
「そうだよ、マジック・ザ・ギャザリングさ!」
 ユウキはそう言ってカバンからデッキとかライフカウンターとか取り出していく。

「きゃああああああっ!!」
 ずさささささ、とリリスが後ずさる。
「サキちゃんから聞いたのね!ユウキさんのいじわるっ!!」
「だって、マジックが怖くなくなれば、倉田さんはまた学校に行けるようになるんでしょ!一緒に、マジックで遊ぼう!」
 ユウキが呼びかけても、リリスは目をつぶってかぶりを振る。
「いやよ!マジック・ザ・ギャザリングを遊んでるユウキさんなんてきらい、だいっきらい!」
「勇気を出して!君が学校にまた行けるようになったら、きっと黒宮さんだって喜ぶよ!」
「サキちゃんが…?」
「そうだよ。黒宮さんは、君のためにずっと一人で戦ってたんだ。君が、また学校に戻ってきてくれるようにね」
「えっ、どういうことなの?」
 リリスが目を開けて聞こうとするまさにその時、

「たいへんですっ!ユウキさまっ!!」
 ユウキの影から、純白のつばさがまぶしい金髪の天使が出現する。
「セーラ!」
「わっ、本物の<セラの天使>!」
 リリスも多少はマジック・ザ・ギャザリングを遊んだことがあるようでこの有名なカードのことは知っているようだ。
「デュエルスター・シャークがやられたみたいです!テレビを見てください!!」


 17才少年が自殺未遂。麻薬中毒か?
「えー、本日18時ごろ、新宿歌舞伎町のホビーショップにて、鮫島ジャークくん(17才)が首をつって死にそうになっているのが発見され、すぐさま病院に 運ばれました。命に別状はありませんが、精神錯乱状態にあり、医者の話では麻薬による幻覚症状ではないかということす。
 えー、続きましては…」


「まさか、黒宮さんが…」
「わかりません。わたくしにはあの黒宮サキさんに、デュエルスター・シャークを倒すことができるとは思えませんが…」
「とにかく、新宿に行ってみよう!!」
 ユウキはセーラの手につかまる。飛んでいくつもりのようだ。
「待って!サキちゃんがどうしたの?わたしにも聞かせて!!」
 話がわかってはいないが、リリスはサキのことが気になるようだ。
「わかった。倉田さんもいっしょに行こう!」



「わたしは、デュエルモンスター・ナイトメア。デュエリストの諸君を、永遠の悪夢の世界へ招待してやろう!!」
 ナイトメアと融合しデュエルモンスターになってしまった黒宮サキは、誰彼かまわず道行く人々を襲っては悪夢の世界へ引きずり込んでいた。デュエリストと かもう関係ないし。

「黒宮さん、もうやめるんだ!」
 空から、セーラとユウキ、そしてリリスが降りてくる。
「サキちゃん!?」
 サキの変わり果てた姿に驚くリリス。
「倉田さん、こうなった以上は黒宮さんを倒すしかない!デュエルで倒すしか、彼女を救うことはできないんだ!!」
 スターデッキをオープンするユウキ。

「デュエルスター・ユウキ!!デュエルスタンバイ!!」
「デュエルモンスター・ナイトメア!!私を夜の闇に包め!!」

 以下省略。

「な、なんだこれは…」
「誰も、この悪夢の中からは逃げられない。ナイトメアコンボは無敵!」
「ダメですユウキさま。ディバインミューテーションしたわたしの力でも、ナイトメアのパワーには勝てません!」
 もうあっさり簡単に負けムードだった。
「こうなったら、倉田さん!君が黒宮さんを倒すんだ!!」
 ユウキは予備のデッキをリリスに向かって投げる。

「えっ、わたしが? 無理よ!だってわたしは…」
 突然話題を振られ、リリスは狼狽する。
「できる!君ならできるよ!!君は、本当はマジック・ザ・ギャザリング恐怖症なんかじゃない!」
「ええっ?」
 そりゃ本人も驚きである。
「倉田さん、君が本当に怖がっているのはマジック・ザ・ギャザリングそのものじゃない。ゲームを一緒にする相手、つまり他人を怖がってるだけなんだよ!!  マジックの試合で意地悪な相手と対戦してつらい思いをしたせいで、君は人間不信に陥ってたんだ!!」
「そ、そう…なの…?」
「君が戦う相手は君のよく知ってる黒宮さんだ!他人じゃない!!だからだいじょうぶ!!」
「そうですよ!ユウキさまの言うとおりですわ!!自信を持ってください!」
 セーラに至っては話がよく分かってないんだがとりあえず調子を合わせているようだ。

「で、でも…、わたし…」
 そんな簡単に克服できたら不登校なんてやってないわけで。
「バカっ!!リリスのバカっ!! そんなリリスなんて、そんな…!」

「もうごちゃごちゃうるさい!トドメだ!」
 今までよく口をはさまずに我慢してたナイトメアも、もう待ちきれなくなったらしい。
「うわあああっ!!」
「ユウキさん!」
 リリスが、反射的に立ち上がる。ユウキから渡されたデッキを手にして。


 倉田が…、倉田が立った!!倉田が立った!!


 マジック・ザ・ギャザリング恐怖症で、二度とデッキを手に取ることはできないと思われた倉田リリスが、友情の力によって再び立ち上がったのだ!すごい感 動!「デュエルスター感動の名場面」っていうテレビの特番があったら必ず一番にあがるくらい感動的なシーンである。

「今度はお前を悪夢に引きずり込んでやるぅ!!」
 ナイトメアは当然、リリスに襲いかかってくる。
「サキちゃん… よくわかんないけど、わたしのせいでそんな風になっちゃったんだって聞いたよ…でも、わたしが必ず元の姿に戻してあげるから!!」
「ほざくな!」
 デュエルの開始である!

 先攻はリリス。
「夢はいつか必ず覚める。悪夢だって同じよ。わたしがサキちゃんの悪夢を晴らす!」
 セットしたのは、<次元の狭間/Planar Void>

「最も強い者だけが生き残る」
対して、ナイトメアはいつも通りに<適者生存>を置いて、クリーチャーを次々に墓地に送っていく。
「もう悪夢の準備はできたぞ、さあ<ナイトメア>よ、よみがえるがいい!」
 <繰り返す悪夢>のカードを使うナイトメア。

「無理よ。あなたの悪夢は、もうどこにもいない。ナイトメアはね、<次元の狭間>に飲み込まれちゃったのよ」
 意地悪な笑みを浮かべて、リリスが言った。普段のおどおどした登校拒否時ぶりはどこへ行ったのやら、いやに強気である。

「そんな…バカな…永遠に続くはずの、悪夢が…」
「サキちゃんって、やっぱりマジックのことあんまりわかってないのね。そんなんじゃ、わたしのマジックの相手はつとまらないんだからね!」

 それからは一方的な勝負で、20−0でナイトメアは完敗でした。
「もう、サキちゃんはまだ初心者なんだから、こういう使い方の難しいカードは使わないこと!」
 呆然自失するサキの脇で、リリスはそう言って勝手にデッキから<適者生存>と<繰り返す悪夢>のカードを引き抜いた。と同時にスターデッキから闇の力が 抜けて、サキは元の姿に戻ったのだった。

「あ、元に戻った」
 その途端、ユウキたちなど悪夢にとらわれてた人々もみんな元に戻った。楽だね。

「リリス…、どうして…ここに…?」
 サキはナイトメアに乗っ取られていたときのことは覚えてないらしい。
「サキちゃん…、よかった!」
 がばっ、とリリスがサキに抱きつく。女の子同士の行きすぎた友情ってイイね。



 こうして、なんだか知らないうちにデュエルスターがまた一人倒れ、二人の少女に幸せが訪れた。
 次の日には、仲良く登校する黒宮サキと倉田リリスの姿があった。
「おーい、黒宮さーん、倉田さーん!」
「おはようございます、ユウキさん」
 リリスはすっかり元気になったようだった。結局、マジック恐怖症なのか対人恐怖症なのかその辺もよくわからんがうやむやのうちに解決したらしい。
「今日から同じクラスで勉強できるんだね!嬉しいなあ。黒宮さんもそう思うでしょ?」
「あ、当たり前だ…!お前なんかに言われなくたって…」
 黒宮サキは、昨日までとはまるで別人のように赤くなってもじもじしてる。

「ちゃんとお礼言うんでしょ、ほらほら」
 リリスに肘でつつかれて、サキは赤面しつつも、
「あ、ありがとう…、昨日は迷惑かけちゃって。それから今までのことも、ゴメン…」
「もう気にしてないよ。サキちゃんもマジックを嫌う理由がなくなったし、これからは3人で楽しく遊ぼうよ!」
「そ、そうだよな…わたしもリリスと対等に戦えるように頑張るよ。だから今度、その…、一緒に、マジックを…教えてもらいたいんだけど…」

「ちょっとアナタ! 同じデュエルスターのユウキさまの手の内を探ろうというおつもりですね!!」
 ユウキの影の中から、呼ばれてもいないのにセーラが勝手に出てくる。
「べ、別にそんなつもりで…」
「じゃあなんですか? ユウキさまと二人っきりになるのが目的ですね!! まったく油断も隙もあったもんじゃありませんわ! 昨日まであんなにユウキさま を憎んでいらしたのに、今日は色目を使ってみたりして!このツンデレ女!!」
「な、何がツンデレよ。わたしがいつデレデレしたって言うのよ!!」
「今なさったじゃありませんか!」
「ムキーッ!カードのくせに、黒騎士よ!!出ませい!!」
「望むところですわ!」

「あーあ、もう、なんだかなあ…」
「早くしないと、学校が始まっちゃう。さあ行きましょう、ユウキさん」
 ニヤリ、とリリスはユウキの腕に手を回してしっかりつかむと、ケンカしてる二人を置いて出発するのだった。リリスって名前だから小悪魔的なのか?

 こんな学園ラブコメモドキみたいな平和な日々が続くわけがない。まだまだデュエルスターはいる!戦え、新城ユウキ!戦え、デュエルスター・ユウキ!!


 次回予告

 全国のデュエルスペースを浸食するCG!美少女!萌え!
 日本中のホビーを牛耳ろうとするカリフラワー社の陰謀だ!!

 マジック・ザ・ギャザリングが日本から駆逐されれば、もはやデュエルスター同士の戦いどころじゃない!
 守れ!ぼくらのマジック・ザ・ギャザリング!!

 次回 デュエルスター☆ユウキ
 「カリフラワー社の刺客! 打ち破れ!魔の女子十二妹房」

 



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